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NEXTBASE 神事努さんにロングインタビュー

NEXTBASEの神事さんにロングインタビュー

 

【90分間以上にもわたるロングインタビュー】


株式会社ネクストベースでは、2022年8月27日、千葉県市川市に民間企業としては日本初のアスリートの成長を支援するスポーツ科学R&Dセンター「NEXTBASE ATHLETES LAB」を開設しました。開設にあたり、運動計測機器を揃える中でテック技販のフォースプレートも導入していただきました。

開設して約1年を経過した現在、上級主席研究員である神事努様にインタビューを行い、現在の状況や今後の展望、またフォースプレートの役割についてお話を伺いました。

予定を大幅に超えてのロングインタビュー、全部とはいきませんが主だった内容をピックアップしてまとめました。

 

 

改めてネクストベースの事業内容、LABの役割についてお聞かせください。


科学的な意思決定が進んできている

会社として「スポーツに取り組む人たちを笑顔にしたい」の目的に向けた1つの切り口として「スポーツ科学」があります。それをどうやってスポーツをやっている一般の人、特に子どもたちに届けていくのか、ということになりますが、これまでは根性論ベースで語られることが多く、非論理的な指導で進められてきた背景があります。ですが、昨今のIT技術の発展によって今まで見えなかったものが見えるようになってきて、数字として運動技術が可視化できる時代になりました。そうすると、これまで抽象的な言葉や精神論で行われてきた指導が、実際に定量化された数値データからのフィードバックができるようになり、今までの指導がアップデートし始めたところになります。

僕たちは精度の高い計測からのデータを基にフィードバックするサービスを行っておりますが、今では多くのプロ野球選手がLABに訪れ、科学的な視点からパフォーマンス向上を行っています。

 

(スタッフ)>トップアスリート以外の方々に向けたサービスもあるようですが?

 

はい、(NEXTBASE ATHLETES)LABができて約1年、トッププロだけでなくアマチュア、ハイアマチュアの方などLABを利用していただいています。その中でも高校生の利用率も高くなっています。甲子園というタイムリミットがあるからからこそ、選手個別の課題を発見し、効率よく上手になりたいと考えているようです。甲子園で優勝、準優勝するチームさんにも利用していただいており、時代は明らかに変わりつつあります。

高校生や中学生の多くは親御さんも一緒にいらっしゃる場合も多いです。先日、リピーターの選手のお父さんから「この前の試合で140km/hでたよ!」と興奮気味に報告してもらったのですが、そのときの笑顔はとても印象に残っていますね(笑)。やはり、スポーツ科学の活用はパフォーマンス向上に効果が高く、その効果を知っている人たちが増えてきている印象があります。ありがたいことに、このような嗅覚を持った人たちが利用するようになってきていてLABは稼働率が高い状態です。

また、LABに来られない方もスポーツ科学に効果を感じてほしいと、スマホアプリ「Spo+Shot(スポプラショット)」を開発しました。投球速度や打球速度、打球角度が計測できるアプリですが、中高生を中心に活用してもらっています。大谷翔平選手の打球速度や打球角度を目にする機会も徐々に増えてきましたが、自分自身がどのくらいの能力なのかを数字で比較ができるという面白さがあります。対戦機能もあり、楽しんで練習ができるサービスを提供しています。

 

(スタッフ)>アメリカでは科学的なコーチングやフィードバックが進んでいるが、

国内でこの規模で仕掛かけたのはネクストベースが初めてですよね?

 

そうですね。民間施設で運営している、という点が特徴ですね。これまでは大学や国立スポーツ科学センターなどがありますが、研究の色が強く、被験者としての実験に参加する、というスタンスのものです。十分なフィードバックを受けることができませんし、トレーニングを処方してくれるものでもありません。パフォーマンス向上した選手のためにスポーツ科学的なサービスを提供する施設はこれまでありませんでした。そういう意味では日本で初めてできた施設だと思います。

 

 

野球以外にもゴルフ、サッカーなども対象としているとのことですが、その中でも野球に特に力を入れていますが、そのきっかけはありますか?。


指導者を指導する立場に向けて

私自身も野球をやっていたことが大きくて、当時は自分でうまくなることが楽しくて、自分自身で工夫しながら取り組んでいました。でも、競技レベルが上がるにつれて、指導者から強制的にいろんな事をやらされるようになって野球がどんどんつまらなくなってしまいました。スポーツの面白さの一つには、出来ないことが出来るようになることがありますが、それを自分で、体を使って探求していくことが面白さなのに、一方的で強制的な指導を受けた経験が、今の取り組みの原点にあります。

 

(スタッフ)>野球に限らず、これまではどのスポーツにおいてもこのような場面があった気がします。(テック技販)

 

そうですね。また肩と腰のケガをしたこともあって、野球ができなくなりました。それから指導者として進むことを徐々に意識するようになっていきました。大学4年生の時に教員採用試験も受けましたが、指導する知識がないまま先生になっても、私と同じ経験を選手にさせてしまうんじゃないかと思い、もっと研究をして指導者を指導できる立場になろうと、大学院に行くことにしました。

 

 

「科学的結果からのフィードバックを選手にすることも難しいポイントなのかと思いますが、何か意識をされていますか?


選択と集中、重みづけをしてフィードバック

最終的には上達することが大事です。そのためには測定→評価→トレーニングのサイクルを回していくことが重要となります。選手がやるべきことはトレーニングなので、極端に言うと選手が測定や評価の内容を全て知らなくてもよいと思っています。今のスポーツ界において、誰にでも効果がある魔法のようなトレーニングがあると信じている人がいます。でも実際は、選手個人の課題はそれぞれですし、それに合うトレーニングもそれぞれです。本来はテーラーメード型のトレーニングが最も安全で早く上達します。ですから、測定→評価→トレーニングが必要で、この理解がスポーツ界では進んでいない感があります。

例えば、皆さんが眼鏡を作るとき、まず何をしますか?視力を測りますよね?それに合わせた度数を入れてフィッティングしていくものですが、スポーツ界はそうなっていない。まず測らずにこの眼鏡よいからと言って渡されているのが現状なんです。測定と評価した上で解決策を探っていくのが本来ですが、誰かのところに行けばよくしてくれる、という感じになってしまっている。データをちゃんと提供する側(サービスしていく人たち)は測定して、評価をして、正しくそれに合わせた眼鏡を提供できる人が、正しい運用、データ活用出来る人なんだと思います。データを見て、右が0.2で左が0.5でそこから先の話をどう合わせていくの?っていうところ。

 

(スタッフ)>わかりやすい!(笑)たしかに、眼鏡屋さんでは当たり前のプロセスですよね。

 

あと対話も大事で、遠く見えますか?近く見えますか?など状況をくみ取ってそれに合わせた眼鏡が提供されるはずなのに、スポーツ界はそれがなっていないのが現状です。

また、LABには選手と一緒に指導者の方も同伴する機会も多くあります。スポーツ科学に興味がある指導者ですので、ご自身でも勉強されていますし、その引き出しの多さに私自身が大変勉強になっています。科学的な裏付けと現場の指導者の「実践知」が融合するのがこのLABの特徴なのかもしれません。まだ先の話ですが、LABで蓄積された知を体系化して、指導者を育成するアカデミーができたらと考えています。

 

 

「もう一つラボを作ろうと思ったときに必要不可欠となるものは何ですか?」


やはり人、そしてフォースプレート、モーキャップは外せない

今ある環境のモノが最低限必要、そして人!!

最終的にトレーニングまでやらないといけないので、測定して終わりではありません。計測したのはいいけど、「あなたのボールの回転数はこうでした、回転軸はこれです、平均からこれだけ離れています」で終わってしまうと、「そのボールをどう活用するのか」や、「もっと良いボールを投げるにはどうしたらよいのか」まで言ってくれないと、本当の意味でデータを活用できているとは言えません。ですからLABには、S&Cの資格を持ったパフォーマンスコーチと、理学療法士の資格を持ってコンディショニングコーチが常駐し、評価されたデータからトレーニングを処方しています。

 

計測機器の代表的なものとなるとモーションキャプチャーシステム、フォースプレート、ラプソード(弾道測定分析機器)、ハイスピードカメラで、パフォーマンスを数値データとして客観的にみれるようになりますね。究極的には動作分析としてモーションキャプチャーシステムとFPがあれば、ボールの回転だって測れますし、指の運動も指にマーカーをつければ計測することはできますね。

 

 

「なぜ、テック技販のフォースプレートの採用に至ったのでしょうか?」


国内メーカーとしての信頼性

鹿屋体育大学でテック技販のフォースプレートを使っていることは知っていました。鹿屋体育大学では土のマウンド越しに計測をして、やはりLABを作る際にもフォースプレート単体で使うわけではなくマウンドも必要でしたので、トータルの計測環境を作る上で、その経験があるのは大きかったですね。

 

(スタッフ)>ありがとうございます。そうですね、力覚センサやフォースプレート単体のご提供だけではなく、

計測に必要な周辺機器や治具をトータルで考えることを意識しています。

 

また国内メーカーとしての柔軟な対応にも期待したところもありました。

この施設(LAB)を作る際に、これまでに参考となる施設がまだどこにもなかったので、選手がスパイクを履いて投げます、ってなった時に芝のマウンドで問題ないのか?土のマウンドを用意する必要があるのか?など運用面で懸念点はたくさんありました。また、バッティングの計測もしていますので、マウンドを外す手間なども考慮する必要がありました。マウンドの用意をしていただいた際にも剛性やモーションキャプチャーシステムを考慮した高さズレやフォースプレート角度の話なども事前に何度も打合せを行いました。

 

(スタッフ)>國學院大學で部分的な人工芝マウンドを用意してプレ実験も行いましたね。

 

ありましたね。これらもノウハウの一つじゃないでしょうか。結果、今の形に落ち着いて、芝マウンドでスパイクを履いて違和感なく投げられますし、この1年、フォースプレートの取得データ、ノイズの観点からも何の問題もなく使っています。何かあった際にはアフターサービスもちゃんとしていただける点も安心しています。

 

(スタッフ)>ありがとうございます。引き続き頑張ります!

 

あと価格面もあります。やはり民間企業なので、回収していかなければならないので、価格的な点でも国内メーカーは強いですね。

 

 

 

「フォースプレートがフィードバックに寄与するシーンはどこでしょうか?」


後ろ足をどう蹴っているのか?ココで大事なのがフォースプレート

私たちは「ロジックツリー」を作成していて、パフォーマンスの構造分析を行っています。「理にかなった動作」を定義する必要がありますが、LABでは「ボールに流入するエネルギーを大きくさせる」ことが重要であると考えています。エネルギーは「位置のエネルギー」「並進のエネルギー」「回転のエネルギー」から構成されていて、並進エネルギーは速度、回転エネルギーは回転速度が含まれています。大きなエネルギーを持ったボールは、速度が高いですし、回転数も多い。ですから、力学的に良いボールであると定義しています。

このボールのエネルギーを大きくさせるために必要なのが、重心の並進速度であることがわかってきました。重心の速度が上がれば、全身のエネルギーが増えます。そのエネルギーを上腕、前腕、手、ボールに上手に伝達していくのですが、その大元が重心の速度ということになります。

この重心速度は踏み出し脚が着地した直後にピークを迎えます。着地前までにどれだけ重心速度を高められるかが重要で、何が寄与しているのかというと「後ろ足の蹴り動作」なんです。「後ろ足をどうやって蹴っているのか」を数値化できるのがフォースプレートとなります。大きな速度を獲得するためには、大きな力を長い時間作用させる必要があります。重心速度の高低を力積を使って説明するのは簡単ですが、どのような動作によって加速させているかは、人それぞれです。逆動力学計算をしてみても、股関節や膝関節の使い方はいくつかのタイプに分かれます。

 

(スタッフ)>フォースプレートはエネルギーの大元の情報を数値化できるもの、ということなんですね。

 

「どう蹴るのか」に対して、私たちはフォースプレートのデータから力の方向が悪いのか、大きさそのものが低いのか、かかっている時間が短いのかの評価をABCDのような形で評価して、選手にフィードバックしています。並進の速度が上がらない選手はボール速度が遅いですし、その話を選手とすると「実は股関節をケガしていて~」というような話が出てくることがあります。先日もそれが良くなりましたと言って再計測しにきてくれた選手もいました。(笑)

 

このようにロジックツリーを作成し、力学的にエラー動作を抽出します。そのエラー動作が、筋力やパワー発揮のような体力的な問題なのか、痛みや可動域などのコンディショニング的な問題なのか、もしくはスキル的な問題なのかを整理します。そして、そのエラー動作に対して、S&C、理学療法、スキルトレーニングの立場からトレーニングプログラム処方するという流れです。今のところエラー動作は全部わかります!(笑)

 

(スタッフ)>実際に来られる選手、コーチ、監督の方々の反応は如何でしょうか?

 

データを見慣れていない人たちは、どこを見ればいいのか分からないですね。そりゃそうですねよ(笑)バイメカニクス的な変量だけでも、(今はエネルギーまで出していますが)数えてみたら112個のデータがアウトプットされます。

 

(スタッフ)>そんなにあるのですか?!

 

全部重要なのかといわれれば、私は全部重要だと思っていますが、優先順位はあります。私も野球をやっていたので選手やコーチの運動感覚は何となくわかります。その感覚に近いデータと遠いデータがあって、感覚に近いデータから順番に説明していくと、データの理解が早くなります。ただ、普段からフォームについて考えているような選手は、データの理解も早くて、驚かされることがよくあります。だからフィードバックは緊張感もありますが楽しいですね。このフィードバックは、選手の解剖学や力学の勉強の場となっていると感じることもあります。数値に関して最初は理解できなかった選手も、繰り返し測定していくと、「前回とどうですか?」と積極的に質問できるようになってきます。フィードバックは自分自身のデータを使いながら学べるのでとても教育効果が高いのではないかと思います。

 

 

「他ではないサービスの1つとしてエネルギー解析の話がありましたが、もう少し深く教えていただけますか?」


解像度の高い解析ができるからこそのエネルギー評価 

投球動作に関してケガの予防というのは1つ大事なポイントです。これまでの研究で、球速が高い投手のほうが、肘の内反トルクが高いという報告があります。この内反トルクは、肘の内側の靭帯の損傷のリスクに関係していて、できるだけこの内反トルクが低いまま投球したい、ということになります。でもこの内反トルクは、球速に関係する肩関節の内旋トルク増大の副産物であり、球速を高めつつ、ケガを予防するっていうのは、両立しないんじゃないかというのがこれまでの考え方でした。でも、実際LABでプロ野球選手を計測してみると両立する選手が何人もいるんですよ。(笑)球は150km/h近いけど、肘の内反トルクがメチャクチャ小さい。私たちは毎秒1000コマで計測していますし、フィルターも特殊なものを使い、さらにボールから逆動力学計算をしていて、かなり真面目に動作分析をしています。「解像度が高い解析」だからこそ見えてきた部分があるのではないかと感じています。

パフォーマンス向上と怪我の予防の両立ができる選手は、エネルギーフローに特徴があることがわかってきました。投球動作において、エネルギーやその時間微分であるパワーから評価することで、動力の生成や吸収を表現できます。腕を流れるエネルギーは、どれだけ吸収させずに伝達するのかが重要です。内反トルクを大きくさせずに、エネルギーの伝達を良くさせるトレーニングが処方できるようになりました。

このような怪我をしにくいフォームが明らかになってきたので、今後は病院などの医療現場と連携を進めていきたいと思っています。肘を怪我した選手が、保存療法で痛みがなくなったとしても、同じフォームで投げていたらまた痛めてしまいます。ですので、動作分析をすることで、なぜ痛みが出るのかをバイオメカニクス的に評価し、痛みが出ないフォームへ修正していく。今後サービスを展開できたらと思っています。

 

 

「ネクストベース、また神事さんとしての今後の展望を教えてください。」


会社としてはスポーツ科学の中心に、個人としてはより深く 

会社としては、LABを広げていくことはどんどんやっていきたいと思っています。そしてデータを直接扱える人と、データをコーディネートする人、メカニクス的な知識を持った人が増えていったらいいな、という観点でアカデミーみたいなものはやりたいなと思っています。

広がっていく一方で、やっぱり深さがないといけないので、私自身の研究はもっともっと掘り下げてやっていかなきゃいけないなと思ってますので、論文をもっと書きます。(笑)

これってチームだから出来ることで、大学院がない私の大学の研究室だけだと到底できなくて、博士号を持ったバイメカの研究者、S&Cの有資格者、バイメカの修士の持った人が何人かいて、理学療法の先生がいて・・・と、絶対僕一人ではできないし、思いもよらぬ発見があるので、チームって大きいなぁと思います。

だからこそ役割分担があって、私は研究を深めていくこと、またLABを運用していく人、社長含めて会社として営業してこれを広めっていってくれる人、これらをチームとしてできれば目標を達成できるかな、と思います。

 

(スタッフ)>大変貴重なお話し、ありがとうございました。

予定を大幅に超えたロングインタビューになってしまいました(笑)

 

ありがとうございました。これからも宜しくお願い致します。

 

(スタッフ)>こちらこそ、宜しくお願い致します!

 

 

 

※番外編:ピッチングバイオメカニクスの中身のお話し


並進運動になった時後ろ足の力のベクトルがキャッチャーの方向に向き、踏み込み脚が着地するとベクトルが2塁側に向いていることが分かりますね。

(※添付図)

あまり速度が稼げない人はフォースの方向が悪い(例えば、立ちすぎている)ケースがあります。進行方向に向けきれてない。結果、球速が上がらない。

また、姿勢がとても大事で、フットコンタクト時に骨盤が閉じすぎている人だと、前を向くまでの時間が長くてエネルギーロスしているケースもあります。時間的な観点と力の観点を理解しなければならなりません。

 

エネルギーフローについて、

こちらはエネルギーそのものの量を示したグラフ、単位はジュール。

[骨盤(LOWER TORSO)]→若干のタイムラグを伴いながら[胸郭(UPPER TORSO)]→[上腕(UPPER ARM)]→[前腕(FOREARM)]→[手(HAND)]→ほぼ同時に[ボール(BALL)]へとエネルギーがピークを迎えています。

(※添付図)

 

 

 

骨盤 ➡ 胸郭

フットコンタクトした直後で骨盤のエネルギーがMAXになり、そのあと胸郭のエネルギーが最大になります。胸郭のエネルギーは骨盤の3倍ほどになります。ここで前足がつぶれてしまう人は力が一気に小さくなってしまいます。本来は膝を突っ張るような動作が必要で、しっかりと力を伝達しなければいけませんが、エネルギーが胸郭に伝達できません(足の方に戻ってしまう)。いくら手前でエネルギーを作っても上半身に伝えられないことになってしまいます。伝達がうまくいかない選手は、前足を固く使ったり、バネ的な能力を獲得する必要があります。

 

胸郭 ➡ 上腕

エネルギーは大体1/3くらいに減ります。エネルギー伝達が悪い選手は肩に障害がある可能性もあります。となると理学療法士さんの出番です。もし問題なければ、肩関節の使い方がよくないのでは?筋力が足りていないのでは?と対策のアプローチが変わってきます。筋力が足りていない場合、使用する筋が共通なところで懸垂動作で鍛えるのも有効的な手段の一つです。

 

上腕 ➡ 前腕

前腕のエネルギーは上腕の90%ほどになります。伝達の悪い人は上腕二頭筋が過度にエキセントリックな筋収縮が起こっていることが考えられます。このような選手は、またコントロールを気にし過ぎの場合があります。伝達効率が悪い選手に話を深く聞いていくと、監督がフォアボールを嫌う人だった、ということもありました。

 

手 ➡ ボール 

ここで伝達の悪い人は指が伸びてしまっている傾向があります。指のスティッフネス高めましょう。ボールの握り方の改善も一つです。

 

 

プロフィール >

神事 努(じんじ つとむ)

博士(体育学)。国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授。元国立スポーツ科学センター研究員。「投球動作のバイオメカニクス的分析」が主な研究テーマ。ボールの回転軸の方向や回転速度が空気力に与える影響について明らかにした論文で、日本バイオメカニクス学会優秀論文賞を受賞。北京オリンピックでは、女子ソフトボール日本代表のサポートを担当し金メダルに貢献。2016年まで東北楽天ゴールデンイーグルスの戦略室R&Dグループに所属し、チームの強化を推進。現在も、多くのプロ野球選手の動作分析やピッチデザインを行う。