3軸力覚センサ組み込みスマートスティック
高齢者の歩行補助
人間の身体機能は年を経るとともに衰えていき、高齢になると特に足腰の筋力低下やバランス感覚が不安定になっていきます。そうすると転倒の危険性や、そもそも外へ出て歩かなくなってしまうこともあり、より筋力低下を招き、悪循環になってしまうことが考えられます。また、体に痛みを抱えている高齢者も多く、逆にその状態で無理に歩くと、症状が悪化し、将来歩くことが難しくなってしまうケースもあります。
そんな時に杖を使用して体重を支え、歩行補助することによって、ふらつきを軽減し、しっかりした足取りで歩けることが期待されます。具体的にいくつかの効果があります。
・転倒予防…体重を支え、ふらつきを軽減
・足腰の負担軽減…体重を分散して関節にかかる負荷軽減し、痛みの悪化、症状の重症化を防止
・障害物回避…杖先端から地面の状態を感じる(チェックする)ことで段差や障害物を認知
そこで、杖を使用することで一人での歩行を補助することが期待されます。杖には様々な効果があります。
杖歩行の安定性を力覚データからアプローチ
杖歩行の安定は、杖の握り部の支持や使用方法に依存しています。正しく杖を扱えないと、その効果を最大限に発揮することができません。
今回杖のグリップ部に小型・薄型3軸力覚センサ(USL06)を仕込むことによって杖を突いた時、どのように握っているのか、押し付ける力だけではなく、せん断方向のずれる力を計測します。
それに加え、杖先端部にも3軸力覚センサ(TL3B05)を取り付けることによって、地面に対してどのようなつき方をしているのか、こちらも押しつけ力、せん断力を計測します。
握り方、つき方の特徴から杖歩行の安定性を分析し、杖歩行の転倒予防や指導評価へフィードバックします。
また、将来的には杖からの力覚情報やまた加速度情報などを追加して、その人の状態推定を行う、スマートスティックへの発展が期待されます。
力覚センサの組み込み×無線アンプ
人が杖を握る際、杖形状は非常に重要でセンサを仕込んだ時に出っ張りが出てしまうことや、引っ掛かりができてしまうと、扱い方が変わってしまいます。今回、3軸力覚センサUSL06の小型・薄型の特徴を活かして、更にセンサケーブルを真下から出すことによって、杖グリップスペースに違和感なく仕込むことができました。力計測を行う際はベース(センサを固定している部分)も非常に重要で剛性がないと正しいデータ取得ができないこともあり、杖のグリップ部自体を製作しました。かなり繊細な荷重も感じることができ、個人個人のくせや、その時の状態による使い方の違いもセンシングすることが出来ます。
今回は杖を突いて歩き回る計測のため、無線アンプPDL-06を採用しています。PDL-06は無線通信でのデータ取得やPDL-06内のSDカードに保存できるため、ケーブル処理の心配がありません。